ラチェットは、機械工学で、動作方向を一方に制限するために用いられる機構である。
ラチェットは、のこぎり状の歯が刻まれている歯車状のものである。
そしてこの歯に爪が掛かっている。
爪が引っ掛かる方向に回そうとしても回らないが、反対方向に回すと、爪が山の坂を滑って回る仕組みになっている。
ラチェットは自転車、レンチ、ジャッキなどに使われている。
自転車でペダルを漕げば前に進むが、走っている自転車のペダルを止めてもペダルが回されることはない。
ペダルを止めると「ジャー」という音が聞こえるが、実はこの音を出しているのがラチェットである。
ラチェットには2つの用途がある。
その1つは逆転防止である。
ラチェットの爪を固定して取り付けておけば、逆転防止に利用できる。
もう1つの用途は、一方向への回転を伝える機構である。
自転車では、チェーンで駆動される車輪側のスプロケットの中に内転型のラチェットが組み込まれている。
ペダルを漕ぐ方向にラチェットを回すと、ラチェットの歯に車輪の軸に取り付けられた爪が噛み込んで、爪と一緒に車輪を回す。
逆に車輪を前進方向に回してもラチェットが滑って、スプロケットは回らなくなっている。
今は少なくなったが、ぜんまい式の時計にもラチェット機構が使われている。
その1つは巻き上げたぜんまいの力を歯車に伝える部分である。
ぜんまいを外から巻き上げる方向には回るが、ぜんまいが緩む方向への動きは、爪を通じて歯車に伝える様になっている。